作品紹介 俳句

獅子吼令和8年1月号より

主宰の一句

一匹の獏も乗せたり宝船  鵠士 


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「神の留守   」 

竜淵に潜む巌は沈黙す

瞬けばまつ毛の掃ける秋の風

行く秋や風滑りたる水の上

掌に柿の一個の重みかな

山に柿山は憶良か赤人か

南天の実の一入の赤さかな

片脚は甍に置ける秋の虹

秋の虹叩かば甘き音立てむ

今日来たる鳥は何色白秋忌

松茸の大臣と呼ばむ仮初に

翁草不老も不死も願はざる

もろもろの物の影伸び冬の朝

玉手箱開けたる如く時雨来る

ハイボール玻璃に映えたる冬灯

片時雨やり過ごす間をハイボール

波高き海路もあらむ神の旅

 松 江

外堀は湖水神在月の城

三島忌や鞘鳴り今も続きたる

星あまた生まれて滅び憂国忌

 増島城址 二句

冬木立旅館といへど城造り

無重力空間泳ぐ鯉に冬

柏手の木霊呼びけり神の留守

神留守の宮に転びて両手突く

埒もなき胸算用も十二月 


獅子吼令和8年1月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句) 大野鵠士選

宇宙船待ち曼珠沙華直立す    宮本 光野

コスモスを活くれば天を模索する 片桐 栄子

行き合うてはたと目の合ふ穴惑  溝野智寿子

砂時計三分待てば初紅葉     面手 美音

細き枝になりきり小さき蜻蛉をり 奥山 ゆい

団栗の袴脱ぎ捨てころがりぬ   小栗 知柚

足腰に言葉かけつつ秋遍路    杉浦 まり

身に入むや反り緩やかな梓弓   本屋 良子

忘れもの忘れてしまふ夜寒かな  河合はつ江

芋虫を素手で潰して刀自となる  村瀬いく子

月天心我を支へる脚二本     各務 恵紅

生甲斐を聞かれてゐたり敬老日  後藤 朱乃

今にして師の一言の身に入むる  藤井 大和

校正に文字化けのあり狐花    江田はじめ 

鵜舟照覧(維持同人代表句) 大野鵠士選

ペガサスの真下人間蠢けり    武藤 真弦

風戦ぎ夢の世に萩白きかな    津田公仁枝

鰯雲夕日に染まり鯛となる    岡﨑 裕乃

石榴の実採る人もなく爆ぜてをり 棚橋 悦子

拾ひても捨つる他なし虚栗    柴田 恭雨

狼の祭られ空に尾を上げる    矢野 鞆女

身に入むる一人の時間昨日今日  森  美翠

ここだけの秘密にしてね黒葡萄  杉山 玲香

しばらくは茜の空に鹿とをり   髙木 節子

身に入むや湖底の村の物語    松尾ひろし

今しばし野に止まれよ龍田姫   髙橋よし子

穏やかに夫の天寿や星月夜    内藤千壽子

ひんやりと今宵の月に歓喜あり  海老名登水

あの日々を運び来る風吾亦紅   禿  隆子 

踏青抄(一般会員代表句) 大野鵠士選

熊に事情人にも事情捨子花   三島 乙葉

鳥兜小説の鍵握りたる     鈴木 朋子

暗闇に心音刻む夜長かな    谷 ふみ香

獅子頭飾れるのみの秋祭    松島 粋白

水青きフィヨルド行くや空高し 石原かめ代

秋海棠遠く聞こゆる鹿威し   太田 千陽

孤高好きされど秋海棠淋し   箕浦 久子

遠山の鳥の声さへ身に入みぬ  河田 容子

満月の赤銅色は夜の謎     川井 功子

秋風や石載せておく設計図   服部美由貴

秋の潮満ちて海月の漂へり   名和 伸夫

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 柴田 恭雨) 

冬の月陰さへ白く染めてをり            塚本 六可

命日を知るや一輪冬菫           各務 恵紅

落葉踏む音を楽しみ愛でながら          溝野 智寿子

スランプは二度も三度も時雨雲   村上 三枝     

木の実降る熊まだ知らぬ庵の庭      面手 美音

原発の再稼働とや冬の朝     矢橋 初美

迷ひ猫撫でられてをり菊日和   日乃 藤雨子

少し身を寄せ語り合ふ初時雨   橋村 洋子

(選者詠)

そこだけに光を集め冬紅葉        恭雨

東花賞

 東花賞(とうか)は、獅子門の結社賞で、年に1回、20句一組で募集し、審査は道統と獅子門内部の審査員および外部審査員1名により行われます。

 通常は、10月中旬頃に応募締切、審査を経て翌年の獅子吼1月号で結果が発表されます。大賞、佳作、奨励賞が設けられています(該当なしの場合もあります)。

 令和6年の作品募集は、9月を予定しています。

凍蝶来    柴田 恭雨

春風や今も行き交ふ渡船

水音に暮れけり山葵田も人も

そつと手を繋げば光る春の星

隠国の長谷のみ寺へ花の雨

空の青水の青けふ夏立つ日

夏の川光の刃跳ね返す

合歓の花恋の痛みを知りし日よ

土用波風も昨日を忘れよと

発車ベル鳴つて短き夏の果

甘美なる世に苦瓜の苦さかな

波の上に十日の月の光りをり

この花野越えれば母と会へさうな

師の恩に未だ報いず紫苑咲く

哀れなるもののひとつよ秋鵜飼

国道に起点終点花カンナ

水走る音宗忌の夕間暮

幻想の地平線より凍蝶来

孤独てふ伴侶と共に冬薔薇

この先はただ一筋の雪の道

ときめいてざわめいて春焦がれ待つ

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