
作品紹介 俳句
獅子吼令和8年6月号より
主宰の一句
蛇皮を脱ぐ銅版の韃靼図 鵠士
主宰句(道統の句) 大野鵠士
「花の一期 」
春三日月すめらぎの恋大らかに
匂ひ鳥棲むや目の底耳の底
春星の一つは君に紛れなし
花を待つ弓引き絞る心もて
地下街の端に壺庭花の雨hn
予備校の教室とても花の陣
花の宴LEDの灯の幕に
袖なしのダウンベストも花衣
クローンの桜なれども遅速あり
西行の心たづねむ花の陰
時々の初心大切花盛り
雨といふベール遠山桜にも
昨夜よりの雨洗ひたり朝桜
心して花の一期を見届けむ
見ぬままよ母逝きし日の夜桜は
日時計は時忘れたり花曇
ちはやぶる神の吐息に落花舞ふ
紫の玉の涙よ花の精
みちのくの奥の奥より花便り
花屑の山登るには覚束な
花屑は風に渦巻き登り竜
逃げ水の一つ生まれて一つ消ゆ
春雨の雨脚見えずピンヒール
春灯は母の如くに点りをり
獅子吼令和8年6月号より
伊吹燦燦(幹事同人代表句) 大野鵠士選
フライパン重しと思ふ春愁 後藤 朱乃
のんのんと積もるばかりよ春の雪 宮本 光野
つばくろの初見参や段 本屋 良子
春北風や北極星を揺るがすか 塚本 六可
椿落つこの世の過客なる我に 瀬尾 千草
啓蟄や蟻が顔出す動き出す 上田 旅風
青饅やポケット深き割烹着 片桐 栄子
大阪の照る日曇る日春場所よ 江田はじめ
花菜畑絵本のやうにリヤカー来 小林 節子
黒潮を見下ろす崖や藪椿 各務 恵紅
霾晦昨日のことも遠き過去 瀬戸 斐香
三月の風に触れたく逍遥す 武山 瑠子
一文字を引けばしの字の現はるる 小栗 知柚
軍艦に見せかけ老ゆる島の春 藤井 大和
鵜舟照覧(維持同人代表句) 大野鵠士選
麗かや気ままに歩く神の鶏 岡﨑 裕乃
落款の角の欠けたる西行忌 島 亜蘭
荒き風吹くや不動の葱坊主 服部 華宵
啓蟄や虫愛づる子は人見知り 津田公仁枝
一杓に釣釜ゆらと揺れにける 矢野 鞆女
藪中へもんどり打つて鳥交る 松川 正樹
白椿落ちて矜持のいまさらに 村上 三枝
湖の汀の眩し春の風 羽根 佳代
永日や悪役も今好々爺 柴田 恭雨
菜の花忌子規になもしの国言葉 大成 空阿
踏青抄(一般会員代表句) 大野鵠士選
幾つもの放物線を雪柳 荻原みのり
麦踏みて遠くに街の時報聞く 河田 容子
春の川寂然不動鷺一羽 名和 伸夫
座して見る心の迷ひ落椿 太田 千陽
啓蟄や旅に緩める靴の紐 西尾えり子
アンニュイにフォークで突つく蕨餠 橋村 洋子
紙雛の一つを折ればもう一つ 三島 乙葉
仏像のごと鷺白し水の春 小柳 いく
未だ読まぬ本に杖春愁 谷 ふみ香
越えられぬ壁などないとうかれ猫 服部美由貴
一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句
(選者 柴田 恭雨)
ははそはの母の夢見る花の雨 溝野 智寿子
もて余すひとりの時間菜種梅雨 村上 三枝
花詠みて亦花詠みて止めどなし 日乃 藤雨子
花びらのころころころとアスファルト 土川 修平
溜息に暮れ残りたる花の山 面手 美音
花冷や追憶は今鮮やかに 塚本 六可
葱坊主風に靡くをよしとせず 各務 恵紅
(選者詠)
春深し水まんぢゆうがもう出たと 恭雨
東花賞
東花賞(とうか)は、獅子門の結社賞で、年に1回、20句一組で募集し、審査は道統と獅子門内部の審査員および外部審査員1名により行われます。
通常は、10月中旬頃に応募締切、審査を経て翌年の獅子吼1月号で結果が発表されます。大賞、佳作、奨励賞が設けられています(該当なしの場合もあります)。
令和8年の作品募集は、9月を予定しています。
第22回 (令和7年度)
凍蝶来 柴田 恭雨
春風や今も行き交ふ渡船
水音に暮れけり山葵田も人も
そつと手を繋げば光る春の星
隠国の長谷のみ寺へ花の雨
空の青水の青けふ夏立つ日
夏の川光の刃跳ね返す
合歓の花恋の痛みを知りし日よ
土用波風も昨日を忘れよと
発車ベル鳴つて短き夏の果
甘美なる世に苦瓜の苦さかな
波の上に十日の月の光りをり
この花野越えれば母と会へさうな
師の恩に未だ報いず紫苑咲く
哀れなるもののひとつよ秋鵜飼
国道に起点終点花カンナ
水走る音宗忌の夕間暮
幻想の地平線より凍蝶来
孤独てふ伴侶と共に冬薔薇
この先はただ一筋の雪の道
ときめいてざわめいて春焦がれ待つ