過去の作品 俳句

獅子吼令和5年12月号より

今月の句

茶の花や是も玄旨の植残し 支考


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「 帰りなむ 」

不尽てふ不二てふ富士の初雪よ

階の右も左も萩の花

玫瑰 の実よ立待は岬の名

約束を一つ違ふる木賊かな

人を待つ後ろ姿か秋袷

小買物終へ仰ぎたる小望月

仲麻呂の後生を思ふ月今宵

十六夜やわれに放浪癖少し

立待の月ははなから雲隠れ

居待月星一つある二時の位置

雨音を衾としたり寝待月

而して更待月を待たで寝る

南溟に便り届けよ秋燕

妖精に逢ひさうな森美術展

純白の皿に石榴よ午後三時

人の目の及ばぬ所紫苑咲く

せせらぎの如木犀の香の流れ

秋愁ひ杖が似合ふと言はれても

石積みは出島の名残曼珠沙華

曼珠沙華前も後ろもなかりけり

火の色に水を縁取る彼岸花

毒杯の形に似たり曼珠沙華

白毫の放てる露の光かな

帰りなむ上弦の月青き間に

獅子吼令和6年1月号より

今月の句

正月の月夜はうれし見はせねど 支考


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「 福禄寿 」

白帝の好む色らし空の青

秋 月

眼鏡橋眼の奥へ秋の風

草の花忘るることも幸ひか

鬼の子は風に煽られ揺れ止まず

潮の香が地に降ることよ鰯雲

後の月織部の碗の縁の欠け

朝寒や固く感じる靴の音

形なき風の柩よ白秋忌

地下街を出づれば釣瓶落しかな

月光に濡れ赤坂も青墓も

千金の満天星紅葉福禄寿

山中の湯浴みはせねど菊日和

瓜坊の今日はいづこに遊びたる

ブラインド秋の日差しを梳る

風雲のおどろと動く暮の秋

行く秋や常より高き伊吹山 

獅子吼令和6年2月号より

今月の句

鴬の蹴立によるか梅の雪  支考


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「 それぞれの星 」

方寸に洞穴ありて冬に入る

ゆるキャラの短き手足小六月

三島忌や遠きに強く星光り

身の内と思へり木の葉髪さへも

凩や押さるる雲と押す雲と

ネオン暗き田舎の銀座片時雨

漱石忌人それぞれの星を持つ

人といふ杖もありけり十二月

黄といふは忍耐の色石蕗日和

耐ふることさして苦とせず花八手

淋しさの極みを咲けよ冬さうび

羊水に浸かるが如き柚子湯かな

クリスマスソングパスタのソース跳ね

菓子配るわが名はサンタクロースよ

数へ日の夜の底なる子守唄

麦飯にとろろをかけて年詰まる 

獅子吼令和6年 3月号より

今月の句

(休載)


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「大地震 」

峡谷の底を発止と初日射る

大地震根こそぎ揺るる初電車

禍事の一夜の明けて二日晴

わが名呼ぶ声に覚めたり夢始

人参の畑を列車の影走る

殊の外牛鍋好む父なりき

魚変じ恐竜と化す冬の雲

冬空の雲の造型見て飽かず

宙吊りの太陽白し寒に入る

六曲の美濃の山河の屏風かな

冬の虹罪を償ふ如立てり

玄帝よ怒りのなゐは疾く止めよ

凸凹の貨物列車が枯野ゆく

指笛のやうに鳴く鳥冬日和

霜雫不意に打ちたる盆の窪

雪の夜は心にランプ点さばや

獅子吼令和6年 4月号より

今月の句

(休載)


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「 オペ録(上) 」

二十年来腰部脊柱管狭窄症

落葉踏み病の坂を幾そたび

雪嶺の伊吹を讃へ入院す

オペ室にロック寒灯メタリック

術中酔夢 三句

月氷ル切レ味知ラヌ電気メス

吾輩ハ骨削ラレテ海鼠ナリ

神経ノ癒着剥ガサレ虎落笛

麻酔覚め寒灯垂るる鼻の上

昏々と壁の鏡に山眠る

寒鴉羽根はカオスの闇の色

点滴は冬銀河より落ち来るや

主治医は岐阜高校時代の教へ子なり。かつては教師と生徒、今は医師と患者にて、是れ縁と言はずして如何せん

医の道の君も旅人冬桜

オペ九時間に及ぶ。さぞ疲れぬべし。謝するにふさはしき言葉も思ひ浮かばず。ただ、たこ焼きが好きと知れば

熱燗をたこ焼き当てに呑みますか

病棟の北窓閉ぢず開かれず

修行僧の如き粥腹冬果つる

喉に溶ける病院食の鬼の豆

通じ三日なく、やがて尿一滴も出ず。膀胱の蓄尿量は約五〇〇ccまでと聞くに六五〇ccなれば

導尿の抜き差し痛し寒明くる

MR音

穴出むと地虫のもがく呟きか

サイレンのドップラー効果春の雨

コルセット着け出陣の春の夢

形よりスイートピーの色やさし

春の朝肘三角に起き上がる

飛騨出身と告げる若き看護師あり。わが初任校斐太高校卒と知れば懐かしきこと限りなく、「そそり立ちたる乗鞍の山」と唇に浮かびて

春宵や校歌小声に合唱す

レンブラントなら春灯を疾く描け

病む床の幾夜寝覚に梅思ふ

獅子吼令和6年5月号より

今月の句

笋の露あかつきの山寒し 支考


主宰句(道統の句) 大野鵠士

「 オペ録(下) 」

デコピンは犬の名バレンタインの日

薔薇さへもパステルカラー春の夕

能登無残春一番も遠慮せよ

筋肉の軋み聞こえて冴返る

燕来るドクターヘリも南より

春満月杖が剣に見ゆる時

戦争の陰の宗教花ミモザ

眼には松籟しかと春嵐

山並は紫に春落暉かな

春灯の坩堝宝石箱の都市

開店四十七年目と言ふ

病院に床屋もありぬ亀鳴くか

芽木の山ココアの色に染まりたり

病院を移れる朝や二月尽

白線流しを思ふ

春水に流して返らざる日々よ

春めくや桃の形のゼリー菓子

まだ穴を出ぬ蟻余震なほ続く

骨固きことを褒められ新若布

舞ふのみの名残の雪となりにけり

病室のテレビ桟敷も春場所ぞ

治聾酒や父は陸軍兵たりし

臍天に向けて歩くな春の

相棒といふ朧夜のコルセット

鳥の恋祝はれゐたる誕生日

春分や杖新しく退院す

獅子吼令和5年12月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句)

冬瓜の不貞寝の蔓を引き寄せる       後藤 朱乃

秋風や駅に小さなランプ小屋            宮本 光野

たゆたへる海猫は気丈かもしれぬ   小栗 知柚

きちきちの草より跳んで草の色        奥山 ゆい

雨音の疎らに夜長始まりぬ                片桐 栄子

名月や何か食はねば息せねば            沖津 秀美

風が風連れ去つてゆく花野かな       面手 美音

彼岸花だけ知つてをり秋来るを       安藤 美保

冬瓜の仏頂面に手を出せず                各務 恵紅

機械のごと蚯蚓前進伸び縮み       澤井 国造 

鵜舟照覧(維持同人代表句)

掌の豆腐賽の目秋の暮                        内藤 千壽子

蚯蚓鳴く湯あみの音も暫し消ゆ      柳 蘭子

木犀の香の滑りゆく水の上               柴田 恭雨

ゑのころの風がなければ眠りをり  矢野 鞆女

雲の峰より木曽川の流れ出づ       宮川 美和子

葡萄棚潜れば高き駒ヶ岳                    松川 正樹

姓を島名を亜蘭とや秋に入る           島 亜蘭

稲光夫の横顔彫塑めく                        彦坂こやけ

きちきちの眼遠くを見つめをり      大竹 花永 

踏青抄(一般会員代表句)

呑気とは惚けかも知れず敬老日         髙木 節子

竹描きし硯を今日は洗ひけり              谷 ふみ香

秋となる諦めきたる旅いくつ              衣斐 佐和子

山道の土嚢蹴散らし猪遊ぶ                   西尾 えり子

無花果の頽廃的に熟したり                   杉山 玲香

種の無き葡萄に問うてみたきこと     鈴木 朋子

国貞の虫売の絵や秋に入る                   草訳 平

古りし日の駅や桃売る娘ゐて               安藤 泰江

黒織部に白く四角く新豆腐                    三島 乙葉

事も無くおしろいの香の日暮れかな  森 美翠  

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 片桐 栄子)

雁渡し空深く斬る大庇                          塚本 六可

露草に来て湿りたる蝶の翅                 面手 美音

一服を運ぶ衣擦れ野紺菊                     日乃 藤雨子

時期遅れ詫びつつ大根蒔きにけり   谷口 樵歩

鈍色に暮れ残りたる葛の露                工藤 美佐子

爽やかや男結びの竹の垣                     草訳 平

(選者詠)流木の転がる岸や秋の声  栄子

獅子吼令和6年1月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句)

秋袷樟脳匂ふ銀座線         宮本 光野

天へ向く蕊はセンサー曼珠沙華    面手 美音

山栗の山の吐息のやうに落つ     各務 恵紅

肩肘を張り来たる身や炉火恋し    藤塚 旦子

秋の蚊の煩はしくもいとほしく    石坂水帆子

零余子採るポケットに陽の温み溜め  小林 節子

座敷掃く箒の音や西鶴忌       瀬尾 千草

無花果の木の低きこそ親しけれ    奥山 ゆい

鵜舟照覧(維持同人代表句)

月今宵月に見られて月を見る        内藤千壽子

望月や牛舎一棟棒のごと         大成 空阿

小鳥来る空どこまでも水色に       彦坂こやけ

満潮の波打ち釣瓶落しかな        武山 瑠子

眠らぬがよし眠れざる長き夜は      柴田 恭雨

蓑虫の淋しくなれば顔を出す       武藤 真弦

石より顔出し蟋蟀は様子見る       渡邉 義弘

老年はただ一度だけ小望月        亀山 健人

一掬の水の手触り秋めける        岡﨑 裕乃

戦争と熊の事のみ行く秋ぞ        可知喜代子

月の兎地球を憂ひ踞る          宮川美和子

踏青抄(一般会員代表句)

秋風や缶の転がる三丁目         高木 杜蒼

神託の聞こえて来たり風の色       衣斐佐和子

二人足して一となりける秋の暮      草訳  平

ぽぽぽぽと羊の群れる秋の空       三島 乙葉

秋冷や大仏の肩豊かなる         石原かめ代

一幕の一人芝居や月今宵         鈴木 朋子

茸狩そろりそろりと急斜面        杉山 玲香

星に問ふ月の横顔いかならむ       松嶋 粋白

雁渡る渡れぬ雁も世にあらむ       安藤 泰江

溌剌とジムは盛況敬老日         日榮 一子

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 片桐 栄子)

異人坂夜露に光る石畳                                  柴田 恭雨

西に日矢東にすくと冬の虹                         各務 恵紅

空見つめ並ぶ鮃は左向き                             日乃 藤雨子

水の音日毎に変へて冬の川                  藤井 大和

一筋の此の道木の実ころころと               津田 公仁枝

神還る風飄々と石切場                                 矢橋 初美

神の旅まさか夏日にならうとは               村上 三枝

(選者詠)寒き顔拾ひて行けり路線バス    栄子

獅子吼令和6年2月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句)

ルビコン河渡り冬将軍どこへ    瀬尾 千草

腰痛はヒトの業病冬銀河      各務 恵紅

つれづれの夕べ一人のきりたんぽ  宮本 光野

衣被つるりと夜の帳かな      後藤 朱乃

爪先より始まるものに枯野かな   塚本 六可

次の世はブラックホール神の留守  小石 正兄

兼題に手も足も出ず少林忌     藤塚 旦子

妻でなく祖母である時木の実降る  面手 美音

鵜舟照覧(維持同人代表句)

不可思議なものの一つよ仏手柑   武藤 真弦

夕時雨横たはる身の重きこと    柳  蘭子

まつさらな明日てふ白紙色鳥来   村上 三枝

露の世と思へど今日の薬飲む    彦坂こやけ

星一つ冬暁のわれ一人       亀山 健人

この星の怒りの色か七竈      岡﨑 裕乃

老年はいつから銀杏黄葉散る    柴田 恭雨

木の葉髪忘るる事も処世なり    五島 青沙

初鵙の同じ梢にあちら向き     谷口 樵歩

店先に天下布武なり富有柿     海老名登水

そぞろ寒AIの世にそつぽ向く   髙橋よし子

六十八連隊跡の返り花       島  亜蘭

踏青抄(一般会員代表句)

凍星の大きく刺さる夜の海     河田 容子

襖絵に垂るる薄墨春星忌      谷 ふみ香

冬林檎皮むき終へるまでの黙    碧  理子

身に入むや昭和歌謡の調べさへ   杉山 玲香

恩師逝く今は波郷と柿談義     森  美翠

行く秋や日の入る方に伊吹山    衣斐佐和子

一瞬の風に社の銀杏散る      太田 千陽

月の弓放たれし矢は戻らざる    鈴木 朋子

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 片桐 栄子)

錆しるきシャッター街やクリスマス   工藤 美佐子

顔の螺子二三外るる嚔かな                     塚本 六可

もう誰も止める術なし銀杏散る            面手 美音

冬帽を取りて手櫛の手際かな         奥山 ゆい

歩きては止まる老犬年の暮             服部 華宵

参道の灯となりて実南天                        溝野 智寿子

冬うらら五人寄りても読めぬ句碑       松川 正樹

(選者詠)

山峡の闇の底打つ冬至かな 栄子

獅子吼令和6年3月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句)

綿虫は無心の境地にてあらむ     小栗 知柚

新幹線小春日の影相棒に       面手 美音

遠き日の狐鳴く夜の子守唄      宮本 光野

雪空を割つて烏の鳴きにけり     片桐 栄子

日向ぼこ意味の通じる誤字当て字   小石 正兄

続きから編むマフラーよ虹の色    奥山 ゆい

冬夕焼此の晩節を楽しまむ      武山 瑠子

一葉忌伸ばしてゐたる札の皺     村瀬いく子

夜の静寂霜降る音に耳凝らす     溝野智寿子

吾をいとふ石焼芋をこぼしつつ    本屋 良子

沖波の力抜きたる小春凪       市川さち子

夕されば霧と聞こゆる鴨の声     藤塚 旦子

迂回して着きたる先はすでに雪    柳  蘭子

綿虫を吹きて私独りぼち       渡辺 靖子

鵜舟照覧(維持同人代表句)

極月の海極月の空の色        柴田 恭雨

白湯沁みる五臓六腑や冬の朝     河合 素汀

後ろ髪引かるる家路冬の虹      岡﨑 裕乃

昼下がり頸を背に乗せ鴨眠る     大竹 花永

毎年のこと石蕗の香の父の庭     武藤 真弦

そぼ降るや湯の見えぬ程浮かぶ柚子  瀬戸 斐香

飛び石に雨の名残や花八手      藤野 祥子

猪は腹をすかして帰りけり      谷口 樵歩

葉牡丹や渦宙に浮くゴッホの絵    髙木 節子

永訣の宮澤トシよ霙降る       島  亜蘭 

踏青抄(一般会員代表句)

十二月ぶつかつて来る風野郎     衣斐佐和子

日溜りの枯野に座り猫となる     河田 容子

席一つ空けて猫待つ小春かな     服部 華宵

カーテンも洗ひて心地よき小春    杉山 玲香

出会ひとは不意なるものや冬至梅   日乃藤雨子

六連星青い地球に国の壁       鈴木 朋子

先づは切る冬至南瓜のシチューかな  中村 京阿

寒禽の声はソプラノ空青し      碧  理子

手鏡の角度を変へむ冬日向      箕浦 久子

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 片桐 栄子)

能登に雨降らぬを祈る三日かな    日乃 藤雨子

被災地の賀状の届く八日かな     土川 修平

強震に鳴けぬ冬鳥日本海       禿 隆子

四方の春予期せぬ地震夜中にも    松橋 五笑

晩年の母と重なる初鏡        岡崎 裕乃

柚子湯の香ほのかに纏ひ眠りけり   溝野 智寿子

樏に命の重さ預けたる        塚本 六可

不揃ひの椀の十七雑煮膳       谷口 樵歩

妻は丸我は四角ぞ雑煮餅       松川 正樹 

(選者詠)薄雪を集め集めてミニだるま 栄子

獅子吼令和6年4月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句)

松過や鳥の泳ぎを見て飽かず    片桐 栄子

寂びれたる町を一瞥寒鴉      渡辺 靖子

賑わしき鳥の鳴き声雪くるか    後藤 朱乃

寒林の明るき日差し鳥の影     溝野 智寿子

遠きほど光あまねき浮寝鳥     小林 節子

湯豆腐や人の深淵垣間見る     塚本 六可

生ハムを薄く包丁始かな      奥山 ゆい

数の子を噛めば幼な日甦る     瀬尾 千草

氷海のクリオネ赤い身を透かす   武山 瑠子

寒鰤や居酒屋にある品書きに    柳 蘭子

鵜舟照覧(維持同人代表句)

初日記乱るる文字で地震のこと   彦坂 こやけ

暖炉焚く茶房の奥の絵本棚     松川 正樹

水仙の花に海鳴る日もあらむ    武藤 真弦

留守居して書棚の整理けふ三日   河合 素汀

吐き切つて深く息継ぐ去年今年   五島 青沙

雪女人を恋ふる夜紅をさす     瀬戸 斐香

誰が為にこの世はあるや初明り   柴田 恭雨

兵役のなき国に在り初日の出    髙橋 よし子

湯を引きて冬満月に招かるる    禿 隆子 

踏青抄(一般会員代表句)

縦割りの白菜の芯動き出す     杉山 玲香

一歩づつ大股になり春隣      松尾 ひろし

着膨れて振り返ること忘れけり   鈴木 朋子

初日記五年日記の三年目      森  美翠

茅葺の半ば朽ちたり寒の雨     太田 千陽

捨て舟に川鵜とまりて冬深む    谷 ふみ香

御降りの窓打つ音の明るさよ    服部 華宵

メレンゲの角ぴんと立ち雪積もる  箕浦 久子

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 片桐 栄子)

花束もリースもミモザなかりせば    奥山 ゆい

ぼんやりと月生みながら雪止みぬ       塚本 六可

星落ちて銀河の飛沫梅の宿             日乃 藤雨子

湖を神は渡らず寒明くる           柴田 恭雨

掲示板埋まる貼紙春近し              藤井 大和

待春や歩行者天国の銀座                        村上 三枝

風花や重き一言さりげなく         谷口 樵歩

(選者詠)白梅や野に返らむとする畑に   栄子

獅子吼令和6年5月号より

伊吹燦燦(幹事同人代表句)

松人の名を思ひ出せずに陶器雛   河合 はつ江

初東風や水浴ぶる鳥一心に     小栗 知柚

雪こんこんのつぺらぼうの庭となり 藤塚 旦子

立春や橋の形に灯がともり     沖津 秀美

味噌󠄀汁に海の匂ひの石蓴かな    奥山 ゆい

地に潜むものに春雷響くらむ    片桐 栄子

野天の湯に冬菜洗へる信濃かな   小林 節子

池に降る鳥声あまた風光る     瀬尾 千草

凍蝶や玻璃の欠片に紛れたる    塚本 六可

ぐい呑を一口残す余寒かな     柳 蘭子

鵜舟照覧(維持同人代表句)

無音てふ音のありけり雪の真夜   杉浦 まり

流木の見え隠れして雪解川     松川 正樹

研ぎ上げて包丁軽し春キャベツ   髙木 節子

大寒の満月空を滑るかに      柴田 恭雨

あはあはと春の雪積む朝かな    村上 三枝

寒満月一身洗はるるごとし     羽根 佳代

蠟梅の墨絵めく日を零しをり    岡崎 裕乃

了解とラインの絵文字春まぢか   河合 素汀

薄氷の水になりたる速さかな    大竹 花永

寒晴やスワンボートの尻撥ぬる   大成 空阿

踏青抄(一般会員代表句)

鳥帰るインキの滲む父の文     西尾 えり子

針供養母の裁ち板断捨離す     谷 ふみ香

仰ぎ見る三門の上春の空      服部 美由貴

日に幾度も庭を眺むる春初め    太田 千陽

髪を切る朝に膨らむ木の目かな   服部 華宵

ひと尾根の霞切り裂く鳥の声    和田 勝子

存分に日の当たりたる春障子    衣斐 佐和子

春浅し舌噛みさうな薬の名     石原 かめ代

山荘や出窓のすみに桜貝      橋村 洋子

薄氷や記憶辿れぬ幼き日      松嶋 粋白

一つ葉集(同人・一般会員の枠無し)代表句

(選者 片桐 栄子)

春の海潮目豊かに伸びゆけり    溝野 智寿子

田の神に手をついて鳴く初蛙    面手 美音

料峭や少し堅目の目玉焼き     塚本 六可

佐保姫の裳裾か畝傍山に靄     柴田 恭雨

桜湯の花びらほどけ二十なる    土川 修平

シャッター音花菜の中に少女笑む  松川 正樹

(選者詠)小道具を外して雛と親しめり  栄子

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